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サバランの歴史

  • 執筆者の写真: savarin2022-blog
    savarin2022-blog
  • 2022年9月19日
  • 読了時間: 4分

更新日:4月27日

 洋酒シロップが染みた、大人のケーキ『サバラン』。

 実は、呼び名がたくさんあります。


サバラン

サヴァラン

ババ

アリババ

ババ・オ・ロム

ナポリターナ・ババ

ポンポネット     ……etc


 基本的なのは上の通りです。サ “バ” ラン、サ “ヴァ” ランという発音表記の違いを除いたとしても、本当に多種多様。お店に、「サバラン売ってますか?」と問い合わせると、「当店は、ババという商品名で……」なんて返されることも珍しくはありません。


 なぜ、ここまでさまざまな呼び名があるのか。

 それは、サバランというケーキの成り立ちが関係していました。





■はじめにババが生まれ、次にサヴァランが……


 フランス伝統菓子のサバランですが、その起源をたどると、スタニスラス・レクチンスキー公という王様にたどり着きます。


 美食家で甘党だったレクチンスキー王は、ある日、大好物のクグロフ(イースト生地の焼き菓子)が乾いて固くなっていたので、お酒をかけて柔らかくするようにパティシエに命じました。これこそが、現在まで続くサバランの原型だそう。この食べ方を気に入ったレクチンスキー王は、自身が愛読していた、『千一夜物語』の登場人物・アリババにちなんで、このお酒に漬けたクグロフを”ババ”と名づけたと言われています。


 ちなみに、東京の自由が丘にある洋菓子店『パーラーローレル』さんや、大阪の天王寺の『なかたに亭』さんなどでは、名前の由来となった“アリババ”をそのまま商品名にしています。どちらも人気商品なので、立ち寄る機会があればぜひ。


 話を戻します。レクチンスキー王が名付けたババは、その後、各地で進化します。


 まず、19世紀中頃。すでにフランスのパリで人気のお菓子になっていたババは、天才パティシエと称されたジュリアン兄弟のお店で改良が加えられて、”サヴァラン”として売り出されます。名前の由来は、『美味礼賛』の著者で、18世紀を代表する美食家のブリヤ・サヴァラン。美食王が発明したお菓子を、天才パティシエが改良し、さらに稀代の美食家の名前がつけられるなんて、なんともゴージャスな成り立ちです。

 ババと、サヴァランの一番の違いは、ブリオッシュ生地の形状だと言われており、ババはコルク栓形や円筒形が基本なのに対して、サヴァランはリング形や王冠形だそうです。ほかにも細かな違いがあるようですが、諸説ありすぎて、明確な違いを断言できないことと、そもそも、近代はババとサヴァランの違いが曖昧になっているみたいなので、割愛します。


 また、サヴァラン以外にも、ババの派生形はたくさんあります。たとえば、フランスからイタリアのナポリに伝わり、ご当地菓子となった”ナポリターナ・ババ”や、同じくイタリアのお菓子で、(ババと同じく)発酵生地にお酒を染みこませた ”マリニャン”などが挙げられます。


 時代とともに進化し、広く派生してきたサバラン。そんな歴史的な背景もあり、現代ではさまざまな呼び名が使われているんですね。


■サバランは、いつ日本に伝わったのか……


 ここまでの歴史情報は、書籍やインターネットの記事を参照したものです。すべてが正しい情報とは言い切れませんが、仏スイーツ業界のメディア誌にあったサバランの解説記事にも、同じような内容が記されていました。(なので、大きな誤りはないはず……)ちなみに、料理研究家の山本ゆりこさんの著書『フランス伝統菓子図鑑』(誠文堂新光社)に、サバランの歴史が詳細に記されているので、おすすめです。


 最後に、冒頭で記した、サバランの呼称のひとつの ”ポンポネット”について。

 同名称のサバランを提供していた、フランス菓子の老舗『A.Lecomte (ルコント)』が、2022年8月31日をもって、日本国内の全店舗を閉店しました。またひとつ、国内から、名物のサバランが姿を消してしまったと、寂しい気持ちでいっぱいです……。


 今後は、『日本のサバランの歴史』について調査を進めたいと思います。

 果たして、サバランはいつ日本に入ってきたのか。資料を探しつつ、老舗洋菓子店への聞き込みもしつつ、歴史をたどっていきます。

 
 
 

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