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【取材記事】新狭山で食べる、㊙サバランーー『トリアノン洋菓子店』、今も受け継がれる“伝統の味"

  • 執筆者の写真: savarin2022-blog
    savarin2022-blog
  • 4月30日
  • 読了時間: 5分

更新日:6 日前

 昭和の時代、工業地帯のベッドタウンとして発展してきた、埼玉県の新狭山駅ーー。その南口からすぐ。 長年、この街とともに歩み、駅前の風景に溶け込んでいるのが、老舗の『(有)トリアノン洋菓子店』です。


 スイーツ好きの人なら、この時点で「おや?」と、思ったはず。そう。こちらは、東京都の高円寺にある人気洋菓子店『トリアノン』の、のれん分けにあたるお店です。


 昭和の趣を今に伝える店内と、伝統のケーキで多くの人を魅了している同店ですが、今回は、その中でも希少な存在となった “サバラン”をご紹介します。



【お店の外観】




新狭山トリアノンと、河野さんの軌跡


 店主でパティシエの河野さんが、洋菓子の世界に飛び込んだのは、15歳の頃。群馬県から上京し、東京都の六本木にあった名店『クローバー』に就職したのが始まりでした。 


「当時、クローバーの共同経営者だったのが、安西松夫さん。私の先生です」と、河野さん。


 安西氏といえば、日本に洋菓子を広めた草分け的存在で、のちに、全日本洋菓子協会連合会の会長も務めた、パティシエ界の巨匠。その薫陶を受け、河野さんは腕を磨いていきます。

 

 そして、、、、、、「先生(安西氏)がクローバーから独立する際、私を含め、数人の職人が同行し、1960年、高円寺にトリアノンを開業しました」(河野さん)


 つまり、河野さんは、トリアノンの創業メンバーのひとり。


「当時の高円寺は、庶民的な商店が軒を連ねていました。その中で、トリアノンは、ドア付きのガラス張りで、モダンで洗練された雰囲気があり、ひときわ目立っていた。店内に併設された喫茶コーナーには、有島一郎さんやジェリー藤尾さんといった芸能人たちも、ふらりと立ち寄り、気軽にお茶をしていましたよ」(河野さん)


 その後、のれん分けを許されて独立。1977年、現在の地に、(有)トリアノン洋菓子店を開きます。

「昔は、日本全国に先生の弟子がいて、のれん分けのお店もたくさんありましたが、今ではもう、うちを含めて数軒しか残っていません。なので、なおさらこの店を大切にしたいと思います」(河野さん)



【お店の内観】



「大事に育てた味」──伝統のサバラン


 河野さんは、御年85歳(2025年時点)。今も毎日、厨房に立ってケーキを作っています。お店には、数々の人気商品がありますが、ぜひ味わってほしいのが サバランです。


 サバランは、フランス発祥の伝統菓子。明治時代に日本に伝わり、以降、日本の洋菓子店に欠かせない存在になりました。


 新狭山トリアノンで提供されているサバランについて、 「先生(安西氏)から教わったことを守って、大事に大事に育てた味です」と、河野さん。


 サバランの特徴である、"ラム酒入りのシロップ"にもこだわっています。

「アルコール分40度の製菓用のダークラムを使っていますが、ラム酒の風味が前に出すぎないように配合を工夫して、お酒が苦手な人にも楽しんでいただける味に仕上げています」(河野さん)


 ちなみに、河野さんいわく、「高円寺のトリアノン時代は、日比谷の酒屋さんで木の樽に入ったラム酒をまとめて仕入れて、それを瓶に小分けして使っていた」とのこと。その酒屋も、今では閉店してしまい、時代の流れと共に、ラム酒をはじめとする材料を少しずつ変えて、味を改良したそうです。


 また、最も気を配っているのが、"生地"です。

「めが荒くなったり、表面に凹凸が出ないように、ていねいに焼いて、その上で、固くなりすぎないようにして、シロップを吸ったら口の中でなめらかに溶けるような食感を目指しています。見た目や食感など、細部までこだわるというのが先生の教えなので」(河野さん)


 細部まで心を尽くし、手間ひまを惜しまぬことで完成するサバランーー。頂きましたが、ほどよく染みたシロップが、噛むたびにジュワッと染み出て、ジャムの甘酸っぱさの奥にほのかに洋酒が香る、逸品でした。


【 サバラン350円 (2025年時点)】



名物――アップルパイ、モカエクレア


 新狭山トリアノンには、サバランの他にも、ロングセラー商品がたくさんあります。


【 アップルパイ320円 (2025年時点)】


 アップルパイは、香ばしく焼き上げたパイに、シナモンがふんわりと漂う一品。 高円寺トリアノン時代の味を色濃く反映している商品とのこと。



【 モカエクレア350円 (2025年時点)】


 モカエクレアは、その名の通り、コーヒー風味のエクレアです。カスタードに少しお酒をきかせた、大人の味わいで、ファンも多いんだとか。



【 タルトレットスリーズ390円 (2025年時点)】


  タルトレットスリーズは、和歌山県産のチェリーを贅沢に使用。華やかな味と見た目で、ティータイムの最高のお供でした。



今や貴重な存在となったサバランを、ぜひ!


 2025年現在、高円寺のトリアノンでは、レギュラー商品のラインナップに、サバランがありません。かつては提供されていて、期間限定で復活した際は、サバランファンの間でも話題になりました。


 新狭山トリアノンで提供されているサバランは、河野さんが独自に進化させたもので、厳密には、高円寺トリアノンのとは異なります。しかし、トリアノンが大好きな人も、初めてその名を知る人も、ぜひ一度、訪れてみてください。


 時代を超えて受け継がれてきたサバランが、あなたをきっと驚かせてくれるはずです。



【筆者:いしい】





『(有)トリアノン洋菓子店』

最寄り駅:西武新宿線 新狭山駅

電話番号:04-2953-5554

住所:埼玉県狭山市新狭山3-1-1

 
 
 

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